奇跡事【完結】


「キョウ!!!」

「傷は浅い。死にはしない」


サーティスはキョウを見て、そう淡々と呟いた。


「……」

「サーシャ。お前は俺の事を覚えてなどいないのだろう」

「……」


身体を震わせているサーシャにそう尋ねるのはサーティスだ。
サーシャはその問いに何も答えなかった。


思い出しているのに。
全てでなくても、サーシャは彼を思い出していた。

なのに、何で。


……目の前にキョウがいるからか?
キョウを傷付けてしまうから?



「サーシャ」

「ルーイ、黙って」

「……」



言わないつもりなんだ。
サーティスには。


自分の中に秘めておくんだ。

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