奇跡事【完結】
スッと剣についた血を拭うと、サーティスはサーシャへと向かって行く。
「サーシャ!!逃げろ!!」
「サーシャああああ!!」
僕とキョウが叫ぶも、サーシャは動かない。
寧ろ、それを待っているようだった。
動かない体を必死に動かす。
だけど、びくともしなかった。
一瞬だった。
サーシャはサーティスが向かってくるのを、待っていた。
僕らの叫びも虚しく、サーティスのその剣はサーシャの胸元を思いっ切り貫いた。
それから、何かをサーシャの耳元で囁く。
それに微かにサーシャが微笑んだような気がした。
真っ赤な真っ赤な、血がサーシャの身体から流れて行く。
その剣を引き抜いたと同時に、ごぼっとサーシャの口から血液が噴出する。
滴る、と言うよりは溢れ出る血液。
サーティスはもう、興味をなくしたのか、サーシャを見下ろすと踵を返した。
サーシャは力なく、その場に倒れて行く。