奇跡事【完結】
第二部【残酷と呪縛】
悲
―――――――――――……
「ああ、なんという事だ」
ずっと、暗い中に押し込められていた。
やっとの事で明るい外へ出たというのに。
そんな声が降ってきたんだ。
ぼんやりとする視界の中。
目に入ったのは、自分の事を怪訝そうに見つめる大人達の姿だった。
「……な、んて事」
「待ち侘びていたのに」
「エレノア様を呼ばなくては」
「そうね、呼んで来るわ」
―――――エレノア?誰だ。
すぐに訪れた人物は、ローブで全身を覆われていた。
顔は見えないが、自棄に妖しく紅く光る唇が不気味だ。
「……この子と、この子かしら?」
「はい、そうです。ああ、まさか、娘から双子が産まれるだなんて」
双子?
……双子って何だ?
ふっと、隣に視線を移せば無邪気に涙を流している小さな赤ん坊が見えた。
……こいつは?……俺の妹?