奇跡事【完結】


だけど、夜になるとぼんやりと思い出すんだ。


何かが足りない、と。

それが何かはわからない。
わからないけど、俺はこれで完璧じゃないんだって思う。


理由も、根拠も、一切説明なんて出来なかったけど。


全てが崩れたのは。

ある事件がきっかけだった。



出かける準備をしている父親に声をかける。


「どこ行くの?」

「今日はデスタンに用事があってな」

「デスタン?」

「ああ、デスタンにいる魔導士が作る魔法具がよくて私達はそれを利用してるんだよ」

「魔法具って何?」

「ご飯作ったりするのに必要なのよ」


そうやって微笑むのは母親だ。
そうか、火を点けたりするのはその魔法具が必要なのか。

だけど、わざわざこんなに遠くまで買いに行かなきゃならないなんて大変だ。

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