奇跡事【完結】
「さ、さっきのは何」
俺がそう尋ねる。すると、その男は一度言葉を詰まらせた。
「……、あれは海を守っている神だ」
「神、様?」
「ああ。本当は攻撃などしたくなかったんだがな。
だけど、航海で命を落とすモノが多くてな」
「……」
「もう大丈夫だろう。……お前」
そう言うと、男は顎に手をやり俺をじっと見つめる。
俺の顔に何かついてるのだろうか。
首を傾げながら、俺も見つめ返す。
その男が再度口を開きかけた時だった。
「サーティス、危ない!」
父親が叫びながら俺を抱きしめる。
ドンっと何か衝撃を受けるが、俺は痛みを感じない。
「まだいたのか!」
そんな男の声がした。
だけど、視界に映るのは父親の服だけだ。