奇跡事【完結】
「……、大丈夫か、サーティス」
「お父さん?」
ゆっくりと体を離した父親は、苦しそうに顔を歪めている。
眉を顰めたまま、俺の頬に手を伸ばす。
「……よか、った」
話す父親の口の端から、ツーっと血が垂れる。それにハッとした。
すぐに背中に手を伸ばすと、どろっとした生温かい何かが触れた。
その正体を確認するのが、怖い。
恐る恐る自分の手に目線を落とす。
その手は真っ赤で、ぬらぬらと光るそれに心臓がドクンと鳴った。
「お、とう……さ」
「お前が無事なら、よか…」
父親が俺の体にもたれかかる。
その重さを支えながら必死に叫んだ。
「お父さん!お父さんっ!」
だけど、返事はない。
ぎゅうっと父親の体を抱き締める。