奇跡事【完結】
また大きく船が揺れた。
あの“魔物”はまだそこにいた。
戦う為に対峙している男。
あの男は神と言っていた。きっと追い払うだけで、殺すつもりはないのだろう。
……そんなんじゃまた被害者が出る。
父親の様に。
俺は静かに父親を横にすると、男の前に立った。
「お前っ!?」
驚いた声を出す男に目もくれず、俺はその魔物に向かって手を翳した。
それから強く念じる。
魔物はぎょろりとした目をこちらに向けると、触手で俺を攻撃しようとした。
だけど、その触手はスパっと切れ海に切れた部分が落ちる。
「―――――死ね」
俺は一言、そう呟くと魔物の体を縦に真っ二つに切り裂いた。
その体は海へと沈んでいく。
沈むと同時に大きな波が起こり、また船が揺れた。
だけど、すぐに治まった。
やっと静かになったんだ。