奇跡事【完結】
「……すまない」
「……」
「息がある時なら治癒魔法でもかけられたんだが…」
「お前ぐらい力を持ってたら、あんなの一瞬で殺せるじゃないか」
力を取り戻した今だからわかる。
この男の魔力の深さに。
きっと、俺よりも強い。
俺の言葉に少し考えてから、その男が口を開く。
「殺す事は容易だ。だけど、生きてるのは皆同じだからな」
「……そんなの綺麗事だ」
「そうかもしれないな」
男は小さく頷き、息をつく。
「俺の名前はマークだ。お前の名前は」
「……」
「答えたくない、か」
悲しそうに眉を八の字に下げた男はスッと立ち上がる。
「きっと、また会うだろう」
「……」
マークと名乗った男が立ち去った後、
「サーティス!」
母親が俺の元へと走ってくる。
俺を見て泣きそうになってるその顔を直視出来ない。
すぐに視線を逸らすと、父親の洋服をぎゅっと掴む。