奇跡事【完結】
「……あなた」
「俺の、所為で。かあ、さん。ごめ、ん」
「サーティス、貴方が無事なら」
母親は父親の変わり果てた姿に涙を流すも、俺を抱き締めた。
その温もりが、強張っていた体を溶かしていく。
「……お母さん、かあさ、……うっ」
抑えきれなくなった感情が溢れて止まらない。
俺は母親の胸にすがり、思いっ切り声をあげて涙を流した。
母親は俺の背中を擦りながら、一緒に涙を零す。
デスタンに到着した俺と母親は父親を埋めた。
出来ることなら自分の家の近くに埋めたかった。
でも、戻るまで綺麗な姿を保つ事は出来そうになかったから。
ずっと乗組員を悩ませていた魔物を倒した事で、俺達は優遇された。
その墓の場所も全てその人達が用意してくれた。
帰る時はいつでも声をかけてくれと言われた。