奇跡事【完結】


「双子は忌み子と言われていたから、それでだわ」

「忌み子?」

「ええ」


母親は体を起こすと、俺を見る。
月明かりがその顔を照らしだした。


「底知れぬ魔力を持った双子は、世界を滅ぼす力を持つから。
だから、生まれてすぐに殺してしまうのよ」

「っ!?」


それに息を飲む。
生まれてすぐに殺す?


「赤子なら力もないからね。酷い話だわ。
双子と知った両親はその力に怯えて自らの手を汚してしまうとも聞いた。
だから、そうなる前にエレノア様に手を下してもらうのかもしれないわ」

「……そのエレノアっていうのは」

「エレノア様は大地に恵みをもたらしてくれる貴重な存在よ。
飢餓に苦しむ人々を救って回ってるって聞いたわ」

「……」


人々を救うエレノアが、忌み子を殺すのはどうしてだ?
そして、どうして俺を生かしたんだ?
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