奇跡事【完結】

色々見て回ったけど。
残っていたのは、護身用にとキョウ同様持たされていた短剣。
衣類なども燃えてしまって、残っていない。



「……これだけか」


ぽつりとそう呟いて、僕はその短剣を手にする。
まだ、熱がこもった短剣。



「ルーイ」

「キョウ」

「……それだけか」



僕の背後から顔を覗かせると、手にした短剣を見てそう言った。
それに小さく頷く。


キョウの方はどうだったんだろう、とキョウを見るけど何も手にしていない。
僕と同じで何もなかったんだろう。


残るは、サーシャだ。


二人でサーシャの家に向かうと、中にぺたりとサーシャが座り込んでいた。


「どうした?サーシャ」


キョウが話しかけるも、返答はない。
不思議に思い、僕とキョウはサーシャに近付く。



手にしてるのは短剣だ。
その短剣をじっと見つめて、微動だにしない。
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