奇跡事【完結】
「ここだ」
ニヤっと笑ったズマーニャは井戸に手をかけて、さっさと中へ入っていった。
「っ!?」
驚いた俺はすぐに井戸の中を覗き込む。
ただでさえ光が当たらなくて薄暗いのに、中は暗くてどうなってるのかわからない。
「ズマーニャ!」
「サーティス、降りてこい。大丈夫だ」
「降りてこいって……」
「そんなに深くない。飛び降りてもサーティスなら平気だろう」
「……」
はあ、その言葉信じるからな。
俺は井戸に足をかけてその淵に乗ると、意を決して飛び降りた。
だけど、スタンっと思ってた以上に簡単に底に着地して、拍子抜けした。
本当に浅かったらしい。
目の前には不敵に微笑むズマーニャ。
そして、その奥には通路がある。
「さあ、エレノア様はすぐそこだ」
この先にエレノアがいるのか。
……なあ、エレノアってのは人々を助けたりしてるんだよな?
俺はズマーニャの顔を見ながら、心の中で問いかけた。
口には出せなかった。
ズマーニャはエレノア様と崇拝していたし。