奇跡事【完結】
「……」
「ズマーニャ、二人にして頂戴」
「エレノア様!?」
剣を首元から動かさずに、ズマーニャがエレノアを見る。
エレノアはさっきからその不敵な笑みを崩さないままだ。
「心配は要らないわ。それとも貴方は私が負けるとでも思っているのかしら?」
「っ!そ、そんな事は」
ズマーニャはハッとしながら言葉を詰まらせる。
それから、ゆっくりと俺の首にあてていた剣を懐にしまった。
一度、俺を見据えてから口を開く。
「……エレノア様に危害を加えたら承知しない」
「何もしない。約束する」
「……わかった」
ズマーニャはエレノアに一度礼をすると、この場から立ち去っていく。
残されたエレノアと俺。
シンっと静まりかえる。
暫く沈黙が俺達を支配した。
最初にその沈黙を破ったのはエレノアだ。
笑みを携えたその口元を動かす。