奇跡事【完結】
「サーティス。愛しい、私のサーティス」
「……何を言ってるんだ?」
「ふふ、私は貴方が欲しいのよ」
「……っ」
言葉を詰まらせた俺は、エレノアを凝視した。
何を言ってるんだ。
俺が欲しい、だと?
「一目、貴方を見た時に思ったわ。貴方の強さに堕ちたの」
「……」
「伴侶として一緒に暮らすのはどうかしら」
「……質問に答えろ。俺の妹はどうした」
何一つ、こいつは答えていない。
俺の妹をどうしたのか。
サーティスだという名を与えた事だけ告げられたって、納得するわけがない。
「ああ、それならどっかに捨てたわ」
「何だと!?」
「だって、貴方がいればいいのだから。要らないでしょう?」
「貴様…!」
「ふふ、いいわ。その目。ゾクゾクする。益々貴方が欲しい」
ちらりとローブの奥から隠れていた瞳が姿を見せる。
恍惚とした瞳が俺を視界に捉えた。