奇跡事【完結】
「サーシャ?」
僕がぽんっとサーシャの肩を叩くと、ハッとしてこっちを振り返る。
僕の顔を見ると、強張らせていた顔を緩めた。
「ルーイ、か」
「どうしたの?」
「いや、この短剣…」
そこで止めると、サーシャは視線を短剣に落とす。
僕とキョウも自分の持っている短剣に目をやった。
「やけに綺麗じゃない?」
そう言われて、まじまじとその短剣を見つめる。
ひっくり返したりもして。
「そうかな…?」
キョウはずっと持っていたから、その違いはわからないみたいで首を傾げる。
かくいう僕も、その違いはわからない。
「こんなに丸焦げの中、この短剣だけ焼かれてないのは不思議で仕方ないんだけど。
煤がついて汚れてはいるけどさ、それでも綺麗だよ」
そう言って、サーシャは短剣を鞘から抜き出すと、「ほら」と掲げてみせる。
確かに、サーシャの言うとおり内側の刃の部分には汚れがついてなく、きらりと妖しく光っていた。
「……まるで、これだけ守られていたかのよう」
半ば、独り事の様に呟くとサーシャは短剣を鞘に戻す。