奇跡事【完結】


「そうね。ただ殺されるのはつまらないわ。
私のモノにならないなら、サーティス。貴方には絶望を味わってもらわないと」

「……」

「私が捨てた場所。それは、ここからずっと東に行った場所よ。
それしか教えてあげない。だから生きてるか、死んでるかは貴方が確認して頂戴」

「……絶対に見つけてやるからな」



それには答えずに、エレノアはゆっくりと口角を上げるだけだ。



「邪魔したな」


そう言うと、俺はエレノアの元から去る。ざわざわとして心が落ち着かない。
井戸の入口にはズマーニャが立っていた。


「終わったのか」


思ってる以上にズマーニャは冷静だった。
至って普通に話しかけてくる。


「ああ、終わった」

「そうか。これからどこに行くんだ?」

「妹を探しに行く」

「……会えるといいな」

「……そうだな」


それから、お互い別れの言葉を言うことなく、俺はズマーニャから離れて行った。
マヒアを出るとただひたすら東に向かう。


会えるかわからない妹を求めて。
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