奇跡事【完結】
ハッとしてすぐに顔を上げる。
ふわりと浮いていたそいつはゆっくりと俺の目の前に着地した。
一切気配なんて感じなかった。
何が出るかわからないからと、一応気を張っていたのに。
俺よりも小さいそいつはニッコリと笑う。
「普通はこの洞窟を利用しないで遠回りするんだよ。
こんなとこに入って来るヤツ、珍しいからね」
「……」
「で、君は誰?」
「……お前こそ、誰だ」
「僕?僕はパチフィスタ。よろしくね」
「ここで何をしてるんだ」
「ええ?それはこっちのセリフでしょ」
そう言うと、パチフィスタはパチンっと指を弾く。
瞬間、洞窟に明かりが灯る。
視界に入らない天井にたいまつがあった。
入口付近にはなかったから、ここら辺にしかないのだろう。
明るくなってそいつを改めて見た。
綺麗な金髪。はっきりとした目鼻立ち。
あどけなく見えるその顔。
俺より年下だろうか。
だけど、確かに目の前の人物からも魔力を感じた。
どれだけ深いモノなのかはわからない。
それでも強いって事だけはわかる。