奇跡事【完結】
例えば、そこで別の生活をしてたら。
俺の事なんて覚えてなかったら。
……実際、俺が覚えてなかった。
だからそれと同じように覚えてないのかもしれない。
そうしたら、俺の存在ってのは。
邪魔なだけなのか?
「……」
サーシャの問いにどう答えたらいいのかわからず、俺は口ごもる。
兄妹なのだから会う。
それが当然だと思っていたから、この言葉は俺に衝撃を与えた。
「ごめん。困らせるような事言っちゃって。
私がそうだったから」
私がそうだったから?
どういう事だ?
サーシャの言ってる事がよくわからず、俺は首を傾げながらサーシャを見つめる。
まだ空を見上げていたサーシャは、一度俺に視線を寄こす。
すぐにぱっと視線を空に戻すと、口を開いた。