奇跡事【完結】


例えば、そこで別の生活をしてたら。
俺の事なんて覚えてなかったら。


……実際、俺が覚えてなかった。
だからそれと同じように覚えてないのかもしれない。


そうしたら、俺の存在ってのは。
邪魔なだけなのか?



「……」


サーシャの問いにどう答えたらいいのかわからず、俺は口ごもる。
兄妹なのだから会う。
それが当然だと思っていたから、この言葉は俺に衝撃を与えた。


「ごめん。困らせるような事言っちゃって。
私がそうだったから」


私がそうだったから?
どういう事だ?


サーシャの言ってる事がよくわからず、俺は首を傾げながらサーシャを見つめる。
まだ空を見上げていたサーシャは、一度俺に視線を寄こす。


すぐにぱっと視線を空に戻すと、口を開いた。
< 288 / 446 >

この作品をシェア

pagetop