奇跡事【完結】
「私ね、捨てられてたんだ」
「……」
「それを村長から聞いたのは、いつだったかな。もうずっと幼かったと思う。
でもね、村の皆はそんな私に優しく接してくれたんだ。
お父さんだって、凄く優しくて私には勿体ないぐらい」
「……」
「だから、もしも今私の兄妹だって言う人が現れたってそれは私を困らせるだけなんだ。
一緒に暮らそうって言われても、私は断る。
だって、いきなり知った何も知らない兄妹より、ずっと知ってる村の人の方が家族だって思えるもん」
「……」
「あ、でもね。もしも兄妹がいるのなら会いたいよ。会いたい。
会って元気ですか?って聞きたい。幸せですかって聞きたい。
私は幸せですよ、って…そう伝えたいな」
「……サーシャ」
「私に兄妹なんているかわかんないけどね。
もしも私ならそう思うよって事で」
「……そうだよな」
いきなりお前の兄だ、なんて言われたら。
誰もが受け入れられないと思う。
俺は妹が“いるって事実”を“知っていた”から受け入れられたんだ。
普通は知らない事だ。
そうしたらサーシャの反応も納得がいく。
……俺は妹に会ったら、一緒に暮らそうとでも言うつもりだったのだろうか。
そんなの迷惑だよな。