奇跡事【完結】
「名前は」
「……こ、ろ…さない、で」
「……」
殺さないで?
どういう事だ。
その場にしゃがみ込むと俺は男の子と目線を合わせた。
「何があった」
「……」
「俺はお前の味方だ。何もしない。答えてみろ」
肩に手を伸ばし触れると、男の子は体をびくりと揺らした。
震えはまだ治まらない。
まだ6~7歳か?
着てる洋服も、泥で汚れているし、破れている。
何があったんだ。こんなにボロボロで。
よく見たら腕とか、膝に傷を負っていた。
「大丈夫か」
俺はその腕と膝へと手を伸ばして、治癒魔法をかけた。
ぽうっと手が淡く光る。
さっきまで血の出ていた傷は消え、ふっと小さく息をつく。
「おに、いちゃん、……すごい」
目を真ん丸にした男の子がそう言うと、俺をまじまじと見つめた。
それからニコリと微笑んだ。
あどけなく笑うその顔に、俺の頬も緩む。