奇跡事【完結】
「何があったか、話せるか」
「……うん」
小さくコクリと頷いた男の子。名前はトライシオンだと告げると続けた。
「二日前に突然、魔物がやってきて村の人達を次々と食べて行ったんだ」
「魔物……?」
「うん、あれは魔物だったと思う。
目は吊り上がっていたし、大きな口に鋭い牙だった。
それで……僕のお父さんとお母さんは食いちぎられたんだ」
「……そうか」
魔物、か。
すぐに浮かぶのは船に乗ってた時に現れた大きな謎の生物。
マークは神だと言っていたけど、俺にはそう見えなかった。
もしもトライシオンの言ってる魔物が、この神だと言うのなら。
神なんて信じられない。
「うっ、それに他のおじさんも、おばさんも、友達も、全て食べられちゃったんだ」
「……辛かったな」
唇を噛み締めながら涙を流すトライシオンの頭を優しく撫でる。
彼はひっくひっくと肩を震わせていた。