奇跡事【完結】
「一緒に来るか、トライシオン」
「えっ」
「俺は妹を探して東に向かっている。だけど、会えないかもしれない」
「……会えないの?」
「ああ、会いたい一心でここまで来たけど、……いや何でもない。
来るのか、来ないのか」
エレノアの言葉を思い出して、ふっと自嘲すると俺は首を振る。
思っていた以上に、エレノアの呪いは強力なのかもしれない。
俺の様子を窺うように顔を覗きこんできたトライシオンは、不安げに尋ねて来た。
「付いて行ってもいいの?」
「ああ、お前に会わせたいヤツがいる」
きっとサーシャならトライシオンに優しくしてくれるだろう。
もう少し東へと向かったら戻ろう。サーシャの元へ。