奇跡事【完結】

「サーシャは不思議なヤツだとは思ってるが、好きとは違うと思う」

「そう?お兄ちゃんって“どんかん”かもね」

「鈍感だと?」

「うん」

「からかうな、トライシオン」

「へへっ」


俺が肩を竦めるとニシシっと歯を見せて笑うトライシオン。

好き、か。
もしも、会いたい。この気持ちが好きというのならば、俺はサーシャを好きなのだろう。


サーシャに会えばわかるだろうか。


それから、数日してサーシャのいる村に到着した。
俺はすぐにトライシオンと共にサーシャの家へと向かった。


扉をノックするが、返事はない。
……出かけているのだろうか。


「どっか出かけてるのかな」

「そうみたいだな」

「それじゃあ、ここら辺探してみようよ」

「そうするか」


そう決めた俺達は村の周りを散策した。
前回来た時は、妹を探す為にすぐに村を出てしまったから周りに何があるとかを一切見ていなかった。


思ってた以上に、この村の周りは長閑で自然で溢れかえっている。
すぐそばに小川が流れていて、近くでは鳥の囀りも聞こえた。
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