奇跡事【完結】
「綺麗だな」
「うん。葉っぱが揺れて綺麗」
ゆらゆらと風に揺れる木々の緑が空へと向かっていた。
その間から漏れる光。
ゆっくりと視線を下におろした時だ。
そこに現れた人物に目を見張る。
「……サーシャ」
その木々の間から姿を現したのはサーシャだった。
手には山菜や木の実。
肩で揃えられた髪の毛が揺れる。
サーシャは俺を視界に捉えると、くしゃりと破顔させた。
その顔に心が動かされる。
「サーティス!」
そんな嬉しそうな顔で俺の名前を呼ぶな。
サーシャはパタパタと音を立て、手に持っている食糧を落とさない様にこっちに近付いてくる。
その姿を俺はじっと見つめていた。