奇跡事【完結】


「ねえ、お姉ちゃん」


ハーブティーをゴクゴクと飲んでいたトライシオンは、コトンとマグカップを置くとサーシャに話しかける。


「何?」

「お姉ちゃんはサーティスに会いたかった?」

「えっ」


その質問には俺も目を真ん丸にした。
サーシャも驚いている。


「二人って好き同士なのかなって思ってさ」

「す、す、好き!?」

「うん」


まだ幼いのに、色恋沙汰に敏感だって事にも驚く。
サーシャは動揺しているようで声を上擦らせていた。


「わ、わ、私は、えっと、」

「俺はサーシャに会いたかった」


視線を泳がせるサーシャを、正面から真っ直ぐに見詰めると俺はそうキッパリと告げた。


サーシャに会いたかった。
もう一度、あの笑顔を見たかった。


この気持ちに嘘は吐けない。
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