奇跡事【完結】
サーシャは潤んだ瞳をこちらに向けると、顔を赤くしてゆっくりとその頬を持ち上げた。
それから、口を開く。
「私も、会いたかった」
「そうか」
「やっぱ二人は想い合ってるね!」
トライシオンはえへへって笑いながら茶化してくる。
それに、俺とサーシャは顔を見合わせて笑った。
サーシャの父親も帰宅して、俺達はサーシャの手料理を御馳走になった。
いくらでも泊まっていいと言ってくれたサーシャの父親の好意に甘えて、俺とトライシオンは暫く泊まらせてもらう事にした。
代わりに俺とトライシオンが猟をして、獣を捕えた。
トライシオンの腕前にサーシャは感嘆の声を上げていた。
それに照れ臭そうに笑うトライシオン。
サーシャの家に世話になってから、三日が経っていた。
トライシオンは村にいる他の子供達とすぐに打ち解けたから、今日はその子達と遊びに行っている。
だから、俺は一人で村の側にある小川の畔に来ていた。
サーシャと再会した、この場所に。