奇跡事【完結】

……でも、そうだって知ってたらきっと俺はサーシャに会えなかったんだろう。
妹だと知って苦しいのに、それでもサーシャに出会わなければよかったなんて思えない。


サーシャと一緒にいると、自然と笑顔になれるんだ。
胸がこんなに温かくなるって事を知らなかった。

これが愛なんだと。

サーシャに逢わなければ気付けなかったんだ。


「名前しか知らなかったんだから、嘘は吐いてないよ」

「……わかっている」

「これでも、一応僕君に同情してるんだよ」

「……」

「双子ってのは生まれた時から幸せな人生なんて歩めないのさ」

「……お前も、なのか」


そう尋ねると、パチフィスタは答える代わりに口角をゆっくりと上げた。
話す気はないのだろう。

それでも、きっとこんなとこに住むぐらいには色々あったのだろう。
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