奇跡事【完結】

「強くなりたい、そう思ったら僕のところに来て。
別に今すぐじゃなくてもいいよ」

「……」

「気が向いたらでもいいし。言いたい事はそれだけ。
あ。それと最後に……この世界はエレノアで廻ってるから、気を付けて」



それだけ言い残すと、パチフィスタはその場からスッと消え去った。



強く。
強かったら父親は死ななくて済んだ?

そんなの関係なかったのか?


日に日に、俺の奥底に秘められた魔力だけが増していく。
それが強くなっていっても、俺自身は変わらない。


魔法を使う事は滅多になかった。
サーシャにだって話していない。

こんな魔力は普通に生活するには無用だと思ってるから。


エレノアやマークの様に、表で生きるか。
それか、パチフィスタの様にひっそりと裏で生きるか。


俺はどっちにもなりたくない。
サーシャと一緒に過ごせたら、それでいいんだ。

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