奇跡事【完結】
「今日はここで休憩しようか。誰かさんの所為で濡れてしまったし」
「誰かさんって、それは私の事?キョウ」
「言わなくてもサーシャじゃんね?」
キョウの言葉に続ける様に、僕が言うとキッとサーシャが睨む。
うっ。て怯みながら、僕は咄嗟にキョウの後ろに隠れた。
「まあまあ、とりあえず一枚だけになってそこの木に干そう。
もしもの時の為に短剣は必ず身近に置いておこう」
そう、指示するキョウに頷くと僕もサーシャも上にきていた服を脱ぐと一枚になる。
そんな寒くなくてよかった。
夜風が当たると、濡れた場所が少しだけ冷えるけど。
でも、それが気持ち良かったりもする。
「……」
「……」
「……」
後ろに手を付いて、僕達は月明りに照らされる湖を見つめた。
キラキラと光が差し込み、透き通った水面がとても綺麗だ。
蒼く、だけど、深い碧に染まったこの湖。
虫の声と、鳥の声だけが聞こえてきて。
「……っ」
改めて静かになってみると、思い出すのはさっき起こった出来事。