奇跡事【完結】
洞窟の入り口前に立つと、俺は目を閉じてゆっくりと息を吐いた。
それから、目を開け真っ直ぐに前を見つめた。
その奥にいるパチフィスタを見るように。
パチフィスタの前だ。どうせ隠したって意味がない。
俺は手に火を灯すと、真っ暗の洞窟内の先へと進んで行く。
それから、パチフィスタに会った場所まで来るとぴたりと足を止めた。
「パチフィスタ。いるか」
「思ったより早かったね」
すぐにそんな声が降って来て、ハッとして顔を上げた。
どこに座っているのかわからないが、パチフィスタは天井付近に腰かけていた。
出っ張っている岩の上だろうか。
そこから一瞬で俺の前まで来ると、ぽいっと俺へと何かを投げた。
「それあげる」
受け取ったそれをまじまじと見つめる。
それは剣だった。
長くずっしりとした剣。
「抜いてみて」
言われた通り、柄を握ると俺はその剣を鞘から引き抜く。
見えた刃紋がきらりと光る。