奇跡事【完結】
「僕に全力で向かって来てみなよ」
「は?」
「いいから。殺すつもりでおいで。強くなりたいんでしょ?」
「……」
ぐっと柄を握る手に力が入る。
俺は覚悟を決めると、パチフィスタに真っ直ぐに向かって行った。
殺す覚悟で。
俺は心臓を一突きしようと、そこめがけて剣を伸ばす。
だけど、その剣は肉に突き刺さる前に受け止められた。
パチフィスタの持つ小さな剣で。
「全力?これが?」
「……まだだ」
再度、剣を振りかざし喉を掻き切ろうとするがそれも綺麗に躱された。
何度も何度も打ち込むが、小さな剣で全て受け止められる。
肩で息をしながら、パチフィスタを見つめた。
パチフィスタは息一つ切らさずに、余裕の表情でこっちを見ていた。
ぐっと奥歯を噛み締める。
そして、またパチフィスタへと向かって行く。
何度やっても結局、全てパチフィスタに受け止められてしまった。