奇跡事【完結】
「サーティス、思ってた以上に弱い」
「……はあ、はあ、お前は何でそんな強い」
「んー。これしかないから」
「……これしか?」
それにパチフィスタは緩く微笑む。
それから彼はその場に腰を下ろした。
「うん。そうでしょ?
魔力が足りなかったら、体を鍛えるしかないじゃん」
「……」
「僕の魔力は増えてるよ。昔よりも。だけど、やっぱりエレノアに勝てる程強くはないんだ。
サーティス。魔力が強くなってるのは君も気付いてるんじゃない?」
俺は答えずに、パチフィスタから視線を逸らした。
「酷いよね。どうせ力をくれるなら誰よりも強い力ならよかったのに」
「……」
「中途半端に強い力なんて要らないよ」
そう言うと、パチフィスタは自嘲する様に笑った。
「……パチフィスタはエレノアを殺そうとした事があるのか」
「僕?ないよ。軽くあしらわれるだけなの知ってるから。
それに痛いの嫌いなんだよね」
「……」
「治癒魔法使えるけど、痛みってのは感じるからね。
僕は強さより、うまく逃げる方法を覚えたってのに近いのかも」
「なんだ、それは」
「ふふ、僕ってかしこ~い」
「……はあ」