奇跡事【完結】
遅いと言いながら怒るのだろう。
そして、またあの笑顔を見せてくれるのだろうな。
サーシャ。俺はもっと強くなる。
お前を守る為に。
洞窟から出た俺は魔法を使ってサーシャの住む村の近くへ移動した。
そこからサーシャの村を目指す。
村に辿り着く前に、あの小川があり俺は足を止めた。
「……」
ここでサーシャに気持ちを告げられ、そしてお互いの気持ちが通じた。
トライシオンとここに来た時、あの木々の間にサーシャが立っていたんだよな。
そんなに前の事でもないのに、もう随分昔の様に感じる。
すると、そこからぬっと誰かが出てきて目を見張った。
その人物を俺を見て目をぱちぱちと何度も瞬かせていた。
「……」
「さ、…てぃす?」
「サーシャ」
「サーティスだ!」
以前より、少し髪の毛が伸びたサーシャ。
だけど、その綺麗な瞳は変わっていない。
泣きそうなのを必死に我慢しているのがわかる。
それから俺の元へと走ってくるその体を、全身で受け止めた。
ぎゅうっと俺の服を掴み、胸元に顔を埋めるサーシャ。