奇跡事【完結】
「遅いよ」
「……待たせたな」
「うん、待ってた」
「寂しくさせたな。もうどこにも行かない」
「約束だよ」
「ああ」
そしてサーシャは涙で濡れたその目を細め、綺麗に笑った。
見たかったその笑顔。
額に一度唇を押し当てると、「トライシオンは?」と尋ねた。
「今、遊びに行ってる。元気だよ」
「そうか」
それから、サーシャと共に家へと向かう。
久しぶりの、サーシャの家で俺の顔も緩んだ。
やっぱりここは落ち着く。
サーシャの側は落ち着く。
暫くしたらトライシオンが元気よく帰宅して来た。
俺がいるのを発見すると、大声で騒いでいて苦笑する。
出会った時の弱弱しいトライシオンはもういない。
無邪気に笑う姿を見てホッと胸を撫で下ろす。