奇跡事【完結】
「……トライシオン。ここにはいられない」
「…っ、ひっく、うっ」
「俺の母親の元へ連れて行く」
「お、にい、ちゃんは」
「……俺は……一緒にいられない」
「何で?お兄ちゃんまでいなくなるとか嫌だよ!」
「悪い、トライシオン」
「嫌だ!嫌だよ!」
「……泣くな」
肩を震わせ、泣きじゃくるトライシオン。
頭に手を置き、そんな言葉しかかけられない自分に嫌気が差した。
俺がサーシャと出会わなければよかったんだよな。
いや、生まれて来なければ。
……。
それでも、俺はサーシャのいない世界なんてもう考えられないんだよ。
「……っ、サーシャ」
これが、エレノアの見せたかった世界か。
俺に。俺だけに。
お前を、殺せば呪いは絶ち切れるんだよな。
それならば望み通り殺してやる。
エレノア。