奇跡事【完結】
廻
泣いているトライシオンを宥めた俺は、瞬間移動して母親の元へと向かった。
もう、隠す必要なんてない。
本当に隠したい相手はサーシャだったのだから。
トライシオンは驚いていたけど、俺は曖昧に笑う事しか出来なかった。
次に母親の元を訪れる時は、サーシャも一緒にと思っていたのに。
トライシオンを連れて母親の家の扉を開ける。
中に母親はいた。
前に来た時以上に母親は驚いている。
「サーティス!?」
ガタッと椅子から音をたてながら立ち上がると、こっちに走り寄ってきた。
「どうしたの!?」
「……お母さん、いきなりで悪いんだけど、この子預かってくれないかな」
「えっ」
トライシオンの肩に手を乗せ、俺は「トライシオンだ」と告げる。
「……初めまして」
「トライシオン。ちゃんと挨拶が出来て偉いわ」
母親はニッコリと微笑み、トライシオンの頭を撫でた。
それから、俺を見上げると不安げに尋ねてくる。
「サーティス、何があったのか教えてくれるかしら?」
「……わかった」
それからあった事を俺は話しした。
全てではないけど。
それでも、大体の事を話せばきっと母親なら引き取ってくれると思ったから。