奇跡事【完結】


ある部屋の一室。
ゆっくりと俺は目を開ける。


視界に入り込んだ人物は、俺を真っ直ぐに見据えていた。
まるで俺がここに来る事がわかってたかの様に。



「……サーティス」

「マーク」



眉を下げ、微かに息をつくと口を開いた。



「いつか来ると思っていた」

「……」

「闇に染まるなよ、サーティス」


それに返答する事はない。
サーシャを殺す運命。最愛の人をこの手にかける苦しみ。


どうしたら闇に染まらずにいられるのだろうか。



「……どうしたら、強くなれる」

「それは何の為に」

「……守る為だ」

「エレノアの命と引き換えに、か?」

「全て知っているのか」


マークはそれに口を噤む。
視線を伏せると、目を閉じて静かに息を吐き出した。


それから、観念したかの様に肩を竦める。
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