奇跡事【完結】
「俺はエレノアを愛している」
「は?」
青天の霹靂。まさか、そんな事言われると思ってなくて俺は口を開けたまま、じっとマークを見つめた。
続きの言葉が出て来なかったからだ。
「おかしいよな。それでも、人を愛する事ってのは理屈じゃない。それはお前もわかるはずだ」
「……」
「気持ちは一方通行で、エレノアに届いた事は一度もない。
全て知っていた。呪いの事も。どんな呪いをかけたかも。
今までどれだけの人を殺してきたか。それをわかっている。
それでも、俺はエレノアを憎みきれないんだよ。
惚れた弱味ってヤツかもな」
「……」
「エレノアを、殺したいんだろう?」
「……お前の愛してる女だぞ。俺を殺さなくていいのか」
俺はサーシャを手にかけた自分も、そんな呪いをかけたエレノアも憎い。
憎くて仕方がない。
だけど、マークはゆっくりと首を振った。