奇跡事【完結】


「僕も行く?」

「……いや、いい」



俺は小さく首を振ると、神殿へと近付いた。
そして、一歩足を踏み入れようとした。だが、その足は何かに阻まれて進まない。


何も障害物なんてないのに、中に進む事が出来ない。
俺とパチフィスタは顔を見合わせる。


「……どういう事だ」

「何でだろう。僕は入れるよ」



そう言うと、パチフィスタは中に軽々と足を踏み入れた。
意味がわからない。


再度、中に入ろうと挑戦するも何度試しても結果は同じだった。



「……俺は中に入れない様になっているのか」

「なるほど。それなら納得かも」

「これじゃエレノアに会う事すら出来ないじゃないか」

「確かに。あ、でも」



パチフィスタが言葉を途切れさせ、俺の背後に視線を向けた。
それに俺も倣うように振り返る。そして、息を呑んだ。



そこに立っていたのは。


「……エレノア様に、何か用ですか?」


――――――あどけない顔をしたサーシャだった。

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