奇跡事【完結】
「何で彼は魔力がないのにあんなに強いんだろうね」
「……鍛えているんじゃないか」
「ふうん。それでもあそこまで強くなるって凄いよね。
エレノアを守りたい一心で、って事なら僕…、彼の事結構好きだな」
「……」
ズマーニャはきっと悪いヤツじゃない。
それは俺も思っていた。
きっと違う出会い方をしたのなら、仲良くなれたのかもしれない。
でも、もう仲良く話す事などあり得ない。
エレノアを殺そうとしている俺と、エレノアに忠誠を誓ったズマーニャ。
どう頑張ったって俺達は交わらない。
「じゃあ、僕の部屋にでも来る?暫くここにいたらいいよ」
「いや、俺は帰る」
「そんな事言わないでよ。行きますよ~っと」
そう言うとパチフィスタは俺を連れて自分の部屋に連れて来た。
以前訪れた時と部屋の様子は変わらない。
「さあさあ、適当に寛いで」
「……前から聞きたかったが、ここはどこなんだ?」
椅子に腰かけることなく、俺はパチフィスタに尋ねた。
パチフィスタはキョトンとした顔を見せると首を傾げる。