奇跡事【完結】
第三部【再生と未来】
驚
――――――――――――
―――――――
パチフィスタは時折言葉を詰まらせていたが、全てを説明してくれた。
エレノアが嫌いな理由も、どうしてサーティスとパチフィスタが知り合いだったのかも。
全てが納得いった。
サーティスが人を殺す事に抵抗がなくなっていたのは、この呪いの所為なんだ。
辛すぎる。あまりにも。
一度だって見たくない。
だけどサーシャの殺される姿を、彼は何度も何度も目の当たりにしたんだ。
「……揺らいだ?」
パチフィスタがそう尋ねる。
それに僕はハッとした。
「いや」
正直、僕の心は揺れていた。
それでも、サーティスを憎む気持ちは存在している。
クスクスと笑うと、パチフィスタは僕を見た。
「殺して欲しいんじゃない。違うよ。僕はサーティスを救って欲しいんだ」
「……救う?」
「そうだよ。この生き地獄からね」
「……」
「もう二度と、サーシャを殺さなくていいように」
それを聞いて、僕は迷いを断ち切った。
揺らぐ気持ちは捨てる。
僕はエレノアを殺して、そしてサーティスを殺す。
また生まれてくるサーシャを救う為に。
それは途方もない覚悟だった。