奇跡事【完結】
一際強い魔力を放つ部屋が、エレノアのいる部屋だ。
大きな扉を押すと広い室内が見えた。
そして、その奥の台座に座っている人物。エレノア。
クスクスとエレノアは不気味に微笑んでいる。
構わず、僕は真っ直ぐにエレノアの元へ近寄った。
一歩一歩、ゆっくりと確実に歩み寄る。
カツンカツンと僕の靴の音が、この広い室内に響き渡った。
「待ってたわ。ルーイ」
赤い唇が弧を描く。
「私を殺しに来たのかしら」
「……そうだ」
「ふふ、いい顔してるわ。見違えたわね」
「カタラにあんな酷い事を。それに、サーティスにも」
「酷い?どうして?サーティスが私のモノにならないからじゃない。
サーティスのいない世界になんて興味がないの」
「なら、エレノアが死ねばいいだけの話じゃないか!」
「ふふ。そうね。確かにそうだわ。
でも、何で私が自ら殺されないといけないの?
私は強い人間が好きよ。強い人間になら殺されてもいいわ」
「……なら僕が殺す」
「そうね。今の貴方になら殺されてもいいわ。
血を分け与えた貴方になら」
「……血、を?」
エレノアは頬に手を当てると、恍惚とした表情で僕を見下ろした。