奇跡事【完結】
ハッとして見ると、私の腕はお父さんの胸を貫いていた。
手にある感触、それはヒトであるお父さんの心臓。
生温かく、そして、柔らかく。
腕にまとわりつく血液。
どうしたって、それは温かくて。
生きていて。
「……ごめんよ、ごめん…」
私の頬を撫でる、その手は。
ずるりと落ちていき、力なく床へと下がっていく。
母親の、悲痛な叫び声。
――――――どこで間違えた?
そして、どうして間違えた?
間違ってる?
私が?産まれた所為?
妹でなく、私が死ねばよかった?
「…………」
“キャハハ、今度ハ娘ガ手ニカケタ”
“アハハ、娘ガ手ニカケタ、死ンダ死ンダ”
“ジゴウジトク。インガオウホウ。全テ悪イノハ父親”
“悪イ?誰ガ?産ンダ母親?”
“殺シタエレノア?”
「やめて、五月蠅い」
ぶつんっと、思考が途切れた様な気がした。
そして、私は真っ暗な世界へと堕ちて行く。
……私が壊れて行く、音がした。