奇跡事【完結】
「次に会う時は俺は容赦しない」
「……キョウ」
キョウは視線を伏せると、静かに微笑んだ。
そして、その姿がすうっと消えて行く。
「キョウっ!!」
腕を掴もうと咄嗟に手を伸ばすが、それは虚しく空をきっただけだった。
伸ばした手を引き戻すと、拳を作り僕はその場に崩れ落ちた。
「……、キョウ」
涙が頬を伝う。
いくつもの線となって流れていった。
崩壊してしまったダムの様に、堰き止めることなど出来ない。
力を手に入れる代わりに。
―――――――――僕は大事な人を失って行く。