奇跡事【完結】
「さって、それじゃあ僕はエレノアを連れて行くね」
「ああ」
「二人はどうするの?」
「俺は……、デスタンに戻る」
「デスタンに?」
あんなに冷たい視線を向けられていたというのに?
カタラは何が言いたいのか、全てわかってるようで優しく微笑むと目を細めた。
「あそこには、プリルとの思い出がたくさん詰まっているからな」
そっか。デスタンはカタラにとって、いい場所とは言えないけど。
プリルとの思い出の場所なんだ。
納得していた僕に、パチフィスタがスススと近付いてくるとぼそっと耳元で囁いた。
「……ねえねえ、ルーイ?カタラってさ、一生独り身っぽくな~い?」
「え」
「黙れ、パチフィスタ」
「うわ、こわ~。だって、そうじゃん。プリルプリルって。
女とか絶対出来ない。これ、あれかな、僕が紹介するべき?」
「……ルーイ。剣を貸せ」
「えっ、剣って」
「ちょ、ちょっと!?何を考えてるの?痛いの嫌いだって言ってるじゃん!」
「その減らず口を一生叩けない様にしてやる」
「嫌だ嫌だーー僕は逃げる!」
「あっ、待て!」
パチフィスタはエレノアを担ぐと、カタラから逃げるように消えた。
カタラは後一歩のとこでパチフィスタを取り逃がしてしまった。
消えてしまった場所で、カタラは悔しそうに拳を作っている。