奇跡事【完結】
「ねえ。ルーイ。君は誰かを好きになったりとかないのかな」
「ないかな。パチフィスタは?」
「僕もないや」
「そっか。いつか、わかるかな」
「う~ん、僕はもうどれだけ生きたかわからないけど、わかってないから…このままわからないのかな」
「パチフィスタって女の子なら誰でもよさそうなのに」
「可愛い子がいたら声をかけるけどね」
「はは。変わらないな」
「簡単には変わらないよ」
「そうだね。簡単には変わらない。人って」
「うん。……ほら、やっぱり行っておいで」
そう言って、パチフィスタは肘で僕の体をつつく。
「もういいじゃん。てかさ。きっと、あのまま恵みが消え去ってしまってても、生きていたよ」
「……」
「エレノアはさ、黒かったから。だから、こうする事でしか白を保てなかったんだと思う。
君は何も黒くないんだ。エレノアを引き継ぐ必要は最初からなかったんだよ」
「それでも、僕の母親がした事の全ては僕が受け継ぎたいから」
「あー、もうめんどくさい。
気になってるんじゃないの?キョウの事」
「……」
「戻るんでしょ?ケーラに。違うの?」
「……」
「1から始めるんでしょ?あの場所で。
僕はそれを見たいんだよ。
デシーヴがいたあの場所に、人が集って行くのを」
パチフィスタは気まずそうに頬を掻くと、視線を逸らす。
それからぼそっと、
「それは僕の夢なんだ」
そう言った。