奇跡事【完結】
懐かしいその森に足を踏み入れた僕は辺りを見渡す。
よく迷子になったここ。
マークおじさんの張っていた結界の所為だったなんて、カタラに教えてもらうまで知らなかった。
ゆっくりと進んで行く。
そして、見えてきたのはあの湖。
何も、変わらない。
透き通る水に差し込む光。
それに照らされる魚達。
静かで、涼しくて。
動物の鳴き声や、風の音とか。
……何も、変わらなかった。
それが、僕の涙腺を刺激する。
「……キョウ、サーシャ」
涙がこぼれそうになるのを、寸で堪えた僕は強引に洋服で拭った。
そして、ケーラがあった場所へ向かう。
酷い惨劇だった僕の育った故郷。
焼け野が原かと思っていた。
だけど、そこには一軒の家が建っていた。
「……家?」