奇跡事【完結】
それは決して大きくはなかったし、真新しいわけでもなかった。
あれからすぐに誰かがここに家を建てたのだろうか。
僕はゆっくりとその家へと近付く。
それから、扉を何度かノックした。
だけど、返事はない。
……誰が住んでるんだろう。
首を傾げ、声をかけようと思った時だった。
「ルーイ」
背中から懐かしい声がして、あまりにも予想してなかった人物で。
それは緩んでいた僕の涙腺を崩壊させるには簡単すぎるぐらいだった。
「……キョウ」
すぐに僕は振り向くが涙でぼやけて、うまく顔を見る事が出来ない。
「何泣いてるんだよ」
「っ、キョウ、だって」
「……待ちくたびれた」
「う、キョウ!キョウっ」
その胸に飛び込み、僕はわんわんと泣いた。