奇跡事【完結】
暫くキョウの胸で泣いていた僕に、キョウは困った顔で笑っていた。
部屋に案内され、僕は真っ直ぐにキョウを見る。
ふわふわの髪の毛は健在だったし、何も変わってなくて、それが更に心を温かくさせた。
「俺、わかったんだよ」
「何を?」
「俺の中に封印されているのは、ルイードなんだって」
「え?」
唐突に告げられたその話は、キョウが知り得ない内容のはずなのに。
ヒントがちりばめられていたとはいえ、僕はエレノアに直接教えてもらったからわかったんだ。
「……すぐにケーラに来たわけじゃなかったんだ。
ケーラに来る事は出来なかった。日に日に募っていく黒い感情を、どう処理したらわからなかったんだよ。
だけど、ある日全て思い出したんだ。
魔物と戦った時に、何があったかを」
「思い出した?」
「そう。エレノアとマークおじさん、そしてルイードが魔物討伐の為に立ち向かったって言ってたよね?」
「うん」
それにコクリと頷く。
確か伝承ではそうだった筈だ。