奇跡事【完結】
ツゥっと冷や汗が僕の頬を伝った。
その瞬間、パチフィスタがあははって笑うと話し出した。
「まあ、結果論の話だけど。
実際サーティスは強いから、剣技ならデシーヴに勝ってただろうし。
二人がやり合った結果、サーティスが強かったわけで」
「……」
「それでも僕はデシーヴが勝つと思ってたから、がっかりしたんだよ。
闇に染まった人間って怖いね」
「サーティス、って何者なの?」
カラカラに渇いた喉で、どうにかそう言葉を絞り出す。
さっきまでの張り詰めた空気はないけど、僕はパチフィスタを警戒していた。
この人は、ヤバいと頭のどこかで警報が鳴っている。
パチフィスタは首を捻ると、静かに唸った。
「う~ん、何者って言われてもな。死ねない人間かな」
「死ねない人間?」
「そう。死にたくても、死ねないんだよ」
「不死身……だから?」
「知ってるの?」
少し驚いた口調のパチフィスタに、僕はこくりと頷く。
傷口が綺麗さっぱり消えていたんだ。
それぐらいしか思い当たらない。